ハンドランチグライダーの作成と調整

ハンドランチグライダーを製作するにあたり、ごく一般的な作り方と調整のしかたを紹介いたします。

1:製作にあたり

ハンドランチグライダーを製作する場合に重要なことを下記に記述いたします。

1-1:図面通りに作る。

主翼の形状は平面図と同じに成っているか、右左が対象に成っているかを確認して下さい。また主翼の上反角は正しく付けてあるか?特に二段上反角の場合、左右の上反角が対象に成っている事が大切です。これが対象に成っていない場合は滑空の時、思い通りの旋回が出来なくなる場合がありますので製作段階で調整して下さい。
水平尾翼、垂直尾翼も同様に平面図と同じに成っているか、右左が対象に成っているかを確認して下さい。

1-2:胴体に正確に主翼、尾翼、垂直尾翼を取り付ける。

胴体に主翼、尾翼、垂直尾翼を取り付ける場合、図面上の取り付け位置にきちんと取り付ける事が大切です。また、胴体に対し主翼、尾翼は直角になる様にきちんと取り付けます。これが斜めに取り付けられてしまうと飛行に影響が出るのは勿論ですが、何といっても格好が悪くなりますので慎重に取り付ける事が大切です。
主翼の取り付け角(迎え角)は付けないのが一般的ですのでこの時点で主翼と尾翼が水平に取り付いているか確認しておく事が大切です。(キットの中には迎え角の付いた物もまれに有りますのでこの場合は図面通りに迎え角を付けます。)まずは胴体に主翼、尾翼を仮止めして下さい。仮止めは瞬間接着材を主翼、尾翼の前縁と後縁に1〜2滴たらして1分程すれば固定できます。

1-3:主翼の固定

仮止めの状態で機体の前から見て左右の翼が同じ様に取り付けられているか?斜めに取り取りついているか?を確認し左右の翼が同じ様に取り付けられている状態にして下さい。この取りつけ調整が終わりましたら確実に固定するために接着をいたしますが、私の場合はセメダインCをすき間に埋め込みます。固定するための接着材はセメダインCやエポキシ系の接着材が良いと思います。

1-4:尾翼の固定

尾翼は右利きの人と左利きの人では固定の仕方が異なりますので注意が必要です。ここではスペースの関係から右利きに付いての固定の仕方を説明いたしますが、左利きの場合は説明の逆がわに固定して下さい。
機体を前方から見て左側に2〜3ミリ下がる状態で傾けて胴体に固定します。(左利きの場合は右側に2〜3ミリ下がる状態で傾けて胴体に固定します。)この傾きは非常に大切です。グライダーの旋回パターンは右利きの場合は右旋回上昇の左滑空がごく自然で一般的ですので滑空時に左旋回にする為に前方から見て左側に傾けます。またこの傾き角が大きい程旋回は小さくなり傾き角が小さい程旋回は大きくなります。

1-5:垂直尾翼の固定

垂直尾翼は水平尾翼の取りつけとは関係無くあくまでも垂直に成る様に固定します。また、機体の上から見て真直ぐに(胴体と平行)固定して下さい。万一、斜めに取りつけますと大変面倒な事に成りますので、今の内に真直ぐに成る様に固定して下さい。垂直尾翼の歪みは飛行性能に大変影響が出ますので固定した後は調整の時でも一切さわらない事が肝要です。

1-6:重心の位置について

重心の位置はグライダーのみならずどんな飛行機にとっても重要な要素ですので指定された位置に重心が来るように重りをつけます。普通、重心の位置は主翼の平 均翼弦に対し前後5〜7%程度の許容がありますがこの段階では指定位置にして下さい。重りは釣などに使う板鉛が使い安いようです。また重りの付け方は右利きの人は胴体の左側に左利きの人は胴体の右側に付けて下さい。これは滑空時の旋回に若干の影響があります。

1-7:塗装について

バルサの木地のままですとちょっとした湿気により翼がねじれてしまいせっかく調整しても次の飛行では飛ばなくなってしまう事が良くありますので是非塗装を行う事を進めます。塗装材としてはクリアラッカーやクリアドープを使い木地の美しさを損なわないような塗装が良いと思いますが、色付きのラッカーやドープを使ってカラーリングを楽しむのも良いかもしれませんね。ただし、色ラッカーや色ドープはクリアに比べ重く成りますのでワンポイント程度にとどめる事をお進めします。
さて、用意する物ですが、目止め用のシーラー(もし無い場合はラッカーにベビーパウダーを15%程度混ぜて良くかきまわした物を使う)、クリアラッカー又はドープ、シンナーそれと400番〜1000番程度のサンドペーパー、勿論、刷毛も用意して下さい。クリアラッカーやドープは模型屋さんとか塗装用品屋さんで売っています。

1-8:目止め塗装

生地全体にシーラーを塗り乾燥を待ってから400番のサンドペーパーで磨きます。このとき、白い粉が出ますので屋外で行って下さいね。サンドペーパーをかけ終わりましたらもう一度シーラーを塗り600番〜800番程度のサンドペーパーで磨き、更にシーラーを塗り1000番のサンドペーパーで磨き上げます。合計3回も塗ったり磨いたりする訳ですね。

1-9:本塗装

目止めが終了しましたらいよいよ本塗装ですが、クリア1に対しシンナー1〜1.5を加えよく混ぜてから刷毛塗りを行い、良く乾燥してから1000番のサンドペーパーで磨き上げますが、これを主翼、尾翼、垂直尾翼は5回〜6回、胴体は3回くり返します。サンドペーパーで磨く場合はサンドペーパーに水を付けて磨いて下さい。塗装は艶が出てきた時点で終了する事が良いでしょう。また、塗装を行いますと機体の重量が増えますのであまり塗りすぎてもいけませんのでほどほどにしておきましょう。

1-10:重心位置の再確認

塗装が終了しますと重心の位置が少し後方に移動しているはずですのでもう一度確認し、ずれている場合は重りの調整を行ってください。

2 飛行調整について

2-1:まずグラインドの調整ですが、出来るだけ風の無い(無風が理想的)所で、飛行機を水平より少し下向きにして軽く押し出すように投げてみます。このときの飛行の状態を確認しますがほぼ3通りのパターンに分かれるはずです。

A: 前方に突っ込んでしまう場合。

B: 一旦頭を上げてから前方に突っ込んでしまう場合。

C: 直線的に飛び奇麗に着陸する場合。

Aの場合やBの場合は調整の必要がありますがCの場合は取り敢えず合格です。


2-2:Aの前方に突っ込んでしまう場合の調整

この場合は主翼に対し尾翼が下がりぎみに成っていますので尾翼の後縁の部分の接着を鋭敏なナイフではがし木片等を楔形にして後縁の部分に差し込み、再度テストを繰り返し(C)の状態になるようにして下さい。この状態で尾翼を完全に接着してしまいます。

2-3:Bの 一旦頭を上げてから前方に突っ込んでしまう場合の調整

この場合は主翼に対し尾翼が上がりぎみに成っていますので尾翼の前縁の部分の接着を鋭敏なナイフではがし木片等を楔形にして前縁の部分に差し込み、再度テストを繰り返し(C)の状態になるようにして下さい。この状態で尾翼を完全に接着してしまいます。

3:いよいよ手投げでの発射調整ですが、ハンドランチグライダーの場合は同じ型の飛行機を何機作って飛ばしても全ての飛行機の発射パターンは異なってしまいますので飛行機ごとに発射パターンを記憶しておく事が大切です。
ここでは、割合と簡単な調整方法を紹介いたします。調整は右利き用で説明いたしますので左利きの人は説明とは逆側に調整してください。

3-1:まず飛行機を地面と平行に持って50%程度のパワーでオーバースローで投げます。この状態の飛行機の姿勢を確認します。ほぼ下記の4パターンに成ると思います。

A):真直ぐに上がり失速してしまう場合

B):左側に突っ込んでしまう場合

C):右側に突っ込んでしまう場合

D):素直に上がりスムースに飛行する場合

3-2:パターンA)の場合

70%程度のパワーでオーバースローで投げて見ます。この場合はパターンA)になるかパターンD)になるはずですのでパターンD)であればこの調整は合格です。思いきって力一杯投げてみましょう。

さらにパターンA)の場合は次の調整を行います。
主翼と尾翼が水平についていないか胴体が上方に曲がってそっている可能性があります。まず、胴体が曲がっていないかを確かめましょう。もし曲がっていましたらドライヤー等で修正して下さい。また、主翼と尾翼が水平かどうかの確認は非常に難しいので胴体が曲がっていなければ主翼と尾翼が平行では無いと云う前提にたって以下の調整を行いましょう。
尾翼を鋭敏なナイフで接着面を少しずつはがし尾翼を取り外します。非常に面倒な作業ですが根気よく行ってください。次に尾翼の前方(接着面側)に木片を楔形にしたものを接着します。この時の楔形は厚い方が1.5ミリ程度で長さは15ミリ程度で良いと思います。尾翼の前側に楔形の厚い方を接着して尾翼の前より後側が下がる感じにします。この状態で尾翼を仮止めして3-1の要領で飛ばして見てパターンの確認をおこないます。

3-3:パターンB)の場合

飛行機を右側に30度程度傾けて50%程度のパワーでオーバースロー又はサイド スローで投げて見ます。この投げる時の飛行機の角度が非常に重要です。最初の時とは上昇が大分変わってきているはずです。さらにパターンA)やB)に成ってしまう場合は飛行機を右側に45度程度傾けてサイドスローかダウンスローで投げて見て下さい。私の機体の中には90度程傾けないとうまく上昇しない機体があります。うまく上昇する様であれば少しずつ力をいれて投げてみて下さい。
また投げる時の角度をいくら付けてもパターンが良く成らない場合は以下の調整が必要になります。

パターンA)の場合は3-2を参考に調整して下さい。

パターンB)の場合は
主翼にねじれがないかまたは胴体が曲がっていないかの確認をします。主翼がねじれている場合、右側と左側の翼が同じ状態になるようにドライヤー等を使って修正してください。また、胴体が曲がっている場合も同様にドライヤー等を使って修正してください。

3-4:パターンC)の場合は

主翼にねじれがないかまたは胴体が曲がっていないかの確認をします。
主翼がねじれている場合、右側と左側の翼が同じ状態になるようにドライヤー等を使って修正してください。
また、胴体が曲がっている場合も同様にドライヤー等を使って修正してください。

曲がりの修正が済みましたら再度、飛行機を地面と平行に持って50%程度のパワーでオーバースローで投げます。
A)B)D)のパターンに成るように修正して下さい。どうしてもパターンC)が直らない場合は0.05ミリ厚さのエンビ板かプラスチック板を幅10ミリ長さ30ミリ 程度切って翼の後縁にタブとして使う事も考えられます。
これらの方法を繰り返し行いスムースな上昇ができる為の角度を体で覚えましょう。

4:自然滑空について

上昇がうまくできた場合、飛行機は滑空に入りますが、右投げの場合は左旋回の滑空にうつります。これは組み立ての時に尾翼を機体を前方から見て左側に2〜3ミリ下がる状態で傾けて固定した効果が現れる為です。しかしこの段階では旋回の大きさは解りませんので実際に上昇させて旋回の大きさを確かめます。旋回の大きさは広場の広さに合わせて大きくしたり小さくしたりの調整が必要になりますので以下に旋回の大きさの調整方法を記述いたします。

4-1旋回半径を小さくする調整(左旋回)

機体を前方からみて主翼の左翼先端後縁を少し下げる事により旋回は小さく成ります。下げる方法としてはドライヤー等を使い少しずつ曲げて行く要領で行いますがまげ過ぎないように注意してください。

4-2旋回半径を大きくする調整(左旋回)

機体を前方からみて主翼の右翼先端後縁を少し下げる事により旋回は大きく成ります。下げる方法としてはドライヤー等を使い少しずつ曲げて行く要領で行いますが下げ過ぎないように注意してください。

これで調整は全て終了です。飛行機は人に当りますと思わぬ事故を招く事がありますので人のいない所で安全を確認の上思いきり飛ばして下さい。

5:追加

飛行機は同じ大きさであれば軽い機体の方がよく滞空時間が長くなります。そのため出来るだけ軽い機体を作るように心がける必要がありますので軽く作る為の方法に付いて記述いたします。

5-1:ハンドランチグライダーの材料選び

一般的なハンドランチグライダーの材料は主翼、尾翼、垂直尾翼はバルサ材で胴体にはバルサ材か桧材などを使用しています。しかし、バルサと桧を使えば軽い機体ができ上がるかと云うと残念ながらそういう訳には行きません。バルサと一言で云いますがバルサにも軽い物から重い物まで色々あります。軽い物は水の重さに比べ1/13位の重さしかない物から1/3位の重さの物まで色々あります。また、バルサには柾目の物や板目のものがありこれらを用途に応じて使い分ける必要があります。

5-2:主翼

主翼は機体の中で一番面積の大きな部分と成りますので軽量化を計る上において大変効率的であると云えます。しかし、軽く作った結果、飛ばすたびに壊れてしまっても困りますので、軽くて強い構造を考える必要があります。
主翼の中で一番壊れ安い部分と云うのは何と云っても前縁です。飛んでいる最中に木にぶつかるのも主翼の前縁からですし、墜落した時も前縁から突っ込みます。又、主翼の後縁も薄く成りますので材料が悪いと波を打った様に曲がってきます。
これらを考えますと前縁は固くて強いハードバルサか桧を使い後縁は軽くて曲がりにくいバルサの柾目の部分を使いたいものです。また中間部分は出来るだけ軽いバルサを使えば構造的にも強く軽量に作る事ができます。
マニアの人達はバルサを購入する時に比重の指定や木質の指定をして出来る限り軽量で強いバルサを揃えようと努力していますが、一般には中なか手に入りずらいのが現状です。従ってこれからバルサを購入するか手持ちのバルサを使おうと考えている人は何枚かのバルサの中で一番軽い物を選び主翼の中間部に使い、柾目で出来るだけ目の真直ぐな物を後縁に使うように心掛けて見ましょう。
ハンドランチグライダーでは大変有名なクラブがあり、そのクラブ員の人の持っている機体の主翼構造を記述いたしますので参考にして見て下さい。

機体は翼長50センチ、幅105ミリ、最大厚み6ミリです。

前縁3ミリ角の桧材、20ミリ幅の柾目の軽量バルサ、中間部分は板目の軽量バルサ、後縁部として20ミリ幅の柾目のバルサを使っています。

5-3:水平尾翼、垂直尾翼

水平尾翼や垂直尾翼は一般に1ミリ〜1.5ミリ程度の薄いバルサを使いますがこの材料選びも慎重に行うべきです。機体の後部に位置する部品ですから、これが重くなると、てこの原理によりバラスト(重り)の量が増大してきます。また特に尾翼は機体の安定を計る重要な役目を持っている為、飛ばしている最中に曲がりが出ては大変です。従って出来るだけ軽量で目の通った柾目材を使用したいものです。
マニアの人の中には前縁、後縁と主翼と同じ様な構造にしている人もいるようですが一般にはそこまでする事は無いと思いますので材料を良く選んで使うように心掛けましょう。

5-4:胴体

胴体は主翼、尾翼、垂直尾翼を支える重要な役目をしており、また絶えず地面や建物と接触する可能性を持っていますので、丈夫さに重点を置き、軽量化についてはあまり考えないほうが無難でしょう。多くの人の自作の機体を見ますと桧やほおの木を使っている物がほとんどですが、私共で輸入しているキットを見ますとハードバルサを使った物が多いようです。しかしバルサを使っているからと云って軽量になっているかと云うとどうも軽量化にはなっていないようです。
ハードバルサは比較的に手に入りずらいしまた桧に比べもろいと云う性質がありますので皆さんには桧材をお進めします。
胴体の形状は前方から主翼の乗る部分までが割合幅を大きくとって後方に行くに従 い細くして行くのが普通です。これは尾翼の時に記述したように後部が重くなるとてこの原理でバラストの量が増大し機体重量が増える事を嫌ったものです。
時々、後部を細く削りすぎて弱くなり過ぎた機体を見る事がありますが、これらの機体はほとんどの場合あまり良く飛びません。構造を良く理解した上で細くして行きましょう。
マニアの人達の機体を見ますと桧とカーボンロットを使い強さと軽量化を計った機 体が多く成っています。

お付き合いありがとうございました。質問などがありましたら電話、ファックス、メール等でお問い合わせ下さい。
電話:042-950-1474 FAX:042-950-1474 メール:kotobki@be.mbn.or.jp
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